二十四節気の大暑に見る田島ヶ原サクラソウ自生地

30有余年の営みは自生地の貴重な歩みです

2011年7月23日(土)

バアソブ
台風の余波の北風が残り、大暑なのに朝の冷気に少し肌寒さを感じながら7時20分頃自生地に到着した。
自生地は観察路に覆いかぶさっていたヨシやオギが刈られて見通しがよくなった。
キキョウ科のバアソブの花が咲いていたが記憶というのはまったく曖昧だ。写真で見ている内にイメージが大きくなってしまい、こんなに小さかったかという感じだった。測ってみると花冠径は約1.5cm、長さ2pくらいだった。
同じキキョウ科ツルニンジン属のツルニンジンより花期がやや早く、全体的に小型で全体に白い毛が散生するバアソブ

オニユリ
オニユリとヒルガオ
オニユリが満開で数ヶ所で群がって花を付けていた。地下に径5〜8pの白い鱗茎をつけ、苦味が無く食べられるので栽培されたものが野生化したと言われる。
茎は暗紫色の斑点があり、茎頂に蕾を付けている時には白い綿毛が多い。葉には柄が無く基部に黒紫色の珠芽ができる。大きな花は結実せず珠芽でふえるという。一回り小さなコオニユリはよく結実し珠芽をつけない。自生地では持ち込まれたものとの噂もある。

ナワシロイチゴがルビー色の実を付けていた。如何にも美味しそうだが実際はそうでもないという。5〜6月頃枝先や葉の脇から集散花序を出し紅紫色の花を上向きに開くが今年はいつもに比べて花が少なかった。
ナワシロイチゴの花 ナワシロイチゴの液果
ナワシロイチゴの花 11年6月6日 ナワシロイチゴの液果
ナワシロイチゴ(苗代苺)は別名サツキイチゴともいいバラ科キイチゴ属の落葉低木。キイチゴ属のほとんどが白い花を付けるがこの種はピンクの花を付ける。茎には刺が多い。葉は3出複葉で小葉は荒い鋸歯があり裏面は白い綿毛に覆われている。

ウマノスズクサ
ウマノスズクサの花 ルリハムシ
2つの白い目が鮮やか 葉をきれいに食べたルリハムシ
ウマノスズクサがたくさんの花を付けていた。花弁は無く、3個の萼片が合着して筒状になってサキソフォンのような形の面白い花だ。
斜めに切断された正面の部分に2つの白い目のようなものがあるが、それが全ての花でハッキリしている。
時期的なもので別に大きな意味はないかもしれないが、ハエがとまって毛が少なくなったのかも知れないと勝手に夢想した。もしそうなら今年は果実が期待できると思ったのは全くの手前みそだ。丸くふくれた部分に6個の花柱と合着した葯があり、その下の部分が子房だ。
近くではハンノキなどの葉に付くというルリハムシが見事に葉を食べ尽くしていた。

B区のクヌギが根元から切り倒されていた。先日片側の枝が全て切り払われていたがその木が今日はまったく無くなっていた。聞けば昔は草原だったのに30数年前に植えられ、陽射しを遮っているのでサクラソウの為に切り倒したという。
そしてこれだけでなく自生地内にあるハンノキやクヌギそしてアカメヤナギも全て切るような話さえある。いったいどこからこんな暴論が出てきたのだろう。

単に30数年前に戻す為だけに切り倒すとしたらまったくナンセンスだ。クヌギは何もない冬の自生地の重要なアクセントになり、小鳥が囀り、樹液に集まる昆虫を呼び寄せている。
そして何より人為的にしろ自然発生したにしろ30数年の歳月が積み上げてきたものを一挙に葬り去るそのこと自体が自生地に対する冒涜だ。
14日のクヌギ クヌギの切株
半分の枝を切り払われたクヌギ 7月14日 切株と倒木の被害のヨシ林
今年初めて見られたB区のナガイモの雌花は大きいのもあったが、鴨川べりのヤマノイモの雄花は茶色に終りかけていた。コカモメヅルはB区の一ヶ所だけで花が見られ、イヌヌマトラノオの花穂は所々で白い花穂を揺らしていた。
シオデの実がアチコチで見られるようになり、シロバナサクラタデも随所で見られた。ヒルガオは自生地全域で見られる。ミズタマソウが1茎だけ花を付けていてもう少しで最盛期を迎えそうだ。

大暑(たいしょ):7月22日頃で今年は23日、暑さが最も極まる頃と言われるが今年は小暑の後猛暑が続き、18日頃から迷走台風6号の影響で気温が下がり、今日も比較的過ごしやすかった。但し来週からは本格的な猛暑に戻るようだ。