二十四節気の夏至に見る田島ヶ原サクラソウ自生地

自生地のオカトラノオ属はほとんどがイヌヌマトラノオ

2012年6月21日(木)

イヌヌマトラノオ
6月には8年振りに日本列島に上陸した台風4号は前日の未明に足早に過ぎ去った。
自生地では全域で白い穂を付けているオカトラノオ属の自然交雑種(イヌヌマトラノオ)が一番被害を受けたよう だ。小さな花を密集させた花穂は風雨に弱く、ほとんどが倒れたり花を落としたりだった。
自生地のオカトラノオ属についてはノジトラノオがあればと探したが、今回は残念ながら確信をもてるのは無か った。
6月早くから花を付けるのはすべて自然交雑種で正確には何なのかはわかっていない。でも花穂や葉の形などから オカトラノオとヌマトラノオの雑種のイヌヌマトラノオとして間違いはないようだ。

イヌヌマトラノオ
20日にイヌヌマトラノオが生育している目黒の自然教育園に行ってきた。
台風の被害で大半が倒れ込んで悲惨な状態だったが観察は細かくできた。前回の09年は7月15日で少し遅めだった ので、早い時期の形を確かめたかった。
やはり田島ケ原や渡良瀬遊水地とは全く違った草姿だった。
茎は丸いが稜はあり高さは70〜100p。葉は互生し細長く水平に開く。葉柄は無く逆披針形で主脈はハッキリし、細まった葉腋からは 必ず新たな枝や葉が出ていた。花径は約1pで、裂片は幅広の楕円形。
少しだけお話しできた植物担当の方は雑種は現れ方にそれぞれ違いがあり、場所によって姿形が違うのは自然で しょうとの話だった。武蔵野植物園の方に2〜3株あるオカトラノオの花はまだで、花期が遅いヌマトラノオは当然蕾も付けていないと の事だった。

トモエソウ
オトギリソウ科の トモエソウは奥の方の中央観察路沿いだけでなく、B区やE区でも大輪の花を咲かせていた。今 が盛りで一日花を毎日咲き継いでいく。
茎は四角で直立し高さ50〜130cm。葉は薄く対生して葉柄は無く茎を抱く。花径は約5pで2.5cmくらいの花弁 5枚は巴形によじれる。この時期街中などで見られる同属のビヨウヤナギやキンシバイと同じく雄しべは長くて多数。雌しべは1本で柱 頭は5裂する。
トモエソウ(巴草)は埼玉レッドデータブック2011で準絶滅危惧(NT)から絶滅危惧U類(VU)にランクアップされた。 「山地ではシカの食害により、低地では園芸採取圧があり、減少傾向にある」との理由は何とも情けないが、商売人の採取は根こそぎで 手の打ちようが無いのが現実のようだ。

雄しべだけのような黄色い花を咲かせているキンポウゲ科の ノカラマツは環境省の準絶滅危惧(NT)だが、埼玉RDB 2011では危険度が一段階下げられた。あまり見栄えのしない花だけに採取される事は少なく、荒川河川敷などに自然繁殖したようだ。 でも大切な在来種である事に変わりはない。
クララの あまり花らしくない花は終りに近く、これからはマメ科特有の豆果の季節で、いつもながらその長さには驚かされる。
ノカラマツ クララ
春先の芽生えはカラフルですが花穂は地味です 右上の円内はクララの蝶形花のアップです
ユリ科のノカンゾウや、ヒルガオはハシリでこれから花がどんどん増えていく。自生地のノカンゾウは赤色の強い ものが多くベニカンゾウとも言われる。マメ科のクサフジは今が盛りでたくさんの葉の上に赤紫の花穂を立てている。タデ科のママコ ノシリヌグイも小さな可憐な花を付けている。
ヒルガオ ホオジロ ママコノシリヌグイ
ヒルガオの葉は下方に張り出す 珍しくヨシの葉にいたホオジロ ママコノシリヌグイ
クサフジ ノカンゾウ ウマノスズクサ
巻きひげが分枝するクサフジ 一日花で咲き継ぐノカンゾウ まだ小形のウマノスズクサの花

夏至(げし):一年で最も昼が長い日。さいたま市の日の出は4時25分、日の入りは19時01分で昼間は14時間36分。
第二十八候 乃東(だいとう)枯る(多くが繁茂する中で夏枯草が枯れる)。第二十九候 菖蒲華(はなさく)。第三十候 半夏生ず (半夏=カラスビシャク)。