田島ヶ原サクラソウの現況と問題点

サクラソウの生育状況の推移

2023年の株数調査ではサクラソウの株数は55万株で、開花率は15.5%です。いずれも前年を下回り、2年連続の増加傾向にストップがかかりました。
ようやく減少傾向が増加傾向に転じ始めた矢先の減少で若干意気消沈です。
今年は特に補完地のサクラソウが素晴らしく、訪花昆虫も多く見られたので自生地もと期待しましたが残念な調査結果でした。
とにかく調査開始以来59年の長きにわたって続けられている株数調査です。それなりの重みと意味はありますので色々検証して再度増加傾向に転じさせたいものです。/div>
サクラソウ自生地は適度に人の手が加わることによって維持されていく里地・草原です。2023年には田島ヶ原サクラソウ自生地が「未来に残したい草原の里100選」に選定されました。
これはサクラソウばかりにスポットがあてられている田島ヶ原が在来種の宝庫として広く存在価値が認められる絶好のチャンスです。
荒川河川敷がセイバンモロコシ、オオブタクサ、アレチウリ、セイタカアワダチソウなどの外来種に席巻されて在来種が追いやられている現状では在来種の宝庫としての田島ヶ原サクラソウ自生地は貴重な存在です。
でもサクラソウは田島ヶ原のシンボルです。是非とも増やすよう自分のできることで応援していきましょう。
年度別サクラソウの株数グラフ
年度別サクラソウ株数一覧
※生育状況表及びグラフはさいたま市教育委員会資料より

田島ヶ原サクラソウ自生地の主な問題点

生井兵冶筑波大学元教授は1990年の田島ヶ原サクラソウ自生地―天然記念物指定70周年記念論文集の中で 「田島ヶ原サクラソウ自生地には有効な花粉媒介昆虫は全くといってよいほど飛来しないので、野生訪花昆虫の繁殖地をいくつか 設ける必要がある。サクラソウの永続的な保全を図るには、種子繁殖による継代が不可欠。」と述べています

訪花昆虫(ポリネーター)の不在

花粉媒介昆虫(ポリネーター)不在については鷲谷いづみ東大教授も「4年間の調査でごくまれに飛来するチ ョウ以外訪花昆虫は観察できなかった」と書いています。
いずれにしてもこの問題はそう簡単に解決できそうもありませんが、とにかくコアゾーン(サクラソウ 自生地)とバッファゾーン(桜草公園)が別々の指揮下に置かれている現状は早急に改めるべきです。2000年には浦和市教育委員会か らその基本理念とサクラソウ公園全体のゾーニングへの提案がなされています。提案されてから20年の歳月が流れています。 「さらなる100年に向かって」歩を進めるにはこの提案の1日も早い実施が不可欠で、こうなってこそ野生の訪花昆虫の繁殖地を作る 事も可能です。

ノウルシの増殖や乾燥化の問題

ノウルシの増殖は深刻で、サクラソウが花を咲かせる時期には一面黄緑色の世界が広がり、その中にピンクが 点在している有様でノウルシ園の様相を呈しています。近年はノカラマツもかなり多くなり、サクラソウは年々その生育場所を奪 われています。
周囲の環境変化による乾燥化も懸念されます。とにかくサクラソウ自生地には問題山積です。

田島ケ原サクラソウ自生地の存亡は市民の双肩にかかっています

上記の問題解決には当然の事ながら自生地、桜草公園の一体化が不可欠です。2元指揮を一本化するのが「さらなる 100年」に向かって」進んで行く第一歩です。
世界遺産はコアゾーンを守るために周囲のバッファゾーン(緩衝地帯)を広く取って保護を進めています。
自生地と周囲の桜草公園の指揮系統を一本化して「未来に残したい草原の里100選」にはサクラソウ自生地そして周囲の桜草公園が共同歩調が取れればこれほど素晴らしい事はありません。両者が一緒になって進められるよう皆で声を上げていきましょう。
2023(令和5)年6月14日改訂