田島ヶ原サクラソウの現況と問題点

サクラソウの生育状況の推移

2013年4月の調査ではサクラソウの株数は107万株に落ち込み、開花率も16.6%に下がって、昨年2014年4月 の調査では更に96万株に減少してしまい減少傾向に歯止めがかかりません
1997年から急速に増加したものの2003年をピークに減少傾向に転じ、多少の増減はあるものの直近の2011年から は4年連続で大きく減少し、調査開始時の48年前の水準を割ってしまいました。
2013年は永久調査枠の平均個体数も2600まで減少し、開花率も16.6%まで落ち込み危機的状況です
サクラソウの生育状況
サクラソウの増減
2014年サクラソウ推定株数   96万株

※生育状況表及びグラフは国指定特別天然記念物「田島ヶ原サクラソウ自生地」保存管理計画策定委員会資料より。

田島ヶ原サクラソウ自生地の主な問題点

生井兵冶筑波大学元教授は1990年の田島ヶ原サクラソウ自生地―天然記念物指定70周年記念論文集の中で 「田島ヶ原サクラソウ自生地には有効な花粉媒介昆虫は全くといってよいほど飛来しないので、野生訪花昆虫の繁殖地をいくつか 設ける必要がある。しかしそれより先にノウルシに侵略されないように、適宜適当な措置を施す必要が急務。サクラソウの永続的 な保全を図るには、種子繁殖による継代が不可欠。」と述べています

訪花昆虫(ポリネーター)の不在

花粉媒介昆虫(ポリネーター)不在については鷲谷いづみ東大教授も「4年間の調査でごくまれに飛来するチ ョウ以外訪花昆虫は観察できなかった」と書いています。そしてサクラソウは花の時期が早春で花筒が長く花粉を媒介できる昆 虫はごく限られ、ポリネーターはトラマルハナバチの女王と実証されたとしています。
私もサクラソウの花の時期にはほとんど訪花昆虫を見ていません。果実は付いているのを見ますが、途中で 黒く腐ってしまうのも見受けられ、正常な他花受粉によるものなのか同花受粉なのかは不明です。
いずれにしてもこの問題はそう簡単に解決できそうもありませんが、貴重な田島ケ原サクラソウ自生を後世 に引き継いでいくためには避けて通れない問題です。

ノウルシの侵略によるサクラソウへの影響

そしてノウルシの侵略は深刻で、サクラソウが花を咲かせる時期には一面黄緑色の世界が広がり、その中に ピンクが点在している有様でノウルシ園の様相を呈しています。近年はノカラマツもかなり多くなり、サクラソウは年々その 生育場所を奪われています。
大正9年の天然紀念物調査報告で三好学博士は「モットモ固有ナルハ桜草ニシテ仲春ノ頃ニハ原頭一面紅 花ヲ以テ飾ラレ之ト交リテ黄色ノ野漆(中略)等花ヲ開キ恰モ天然ノ花薗ノ如ク一大美観ヲ呈ス」と書かれていますが、現在は完 全に主客が転倒しています。

環境の変化(乾燥化)による植生の変化への懸念

最近の環境の変化として大きいのは第一に昭和59(1984)年指定地4.26haを含む15.96haが桜草公園として開設 された事で、湿地が望ましい自生地と乾燥が望ましい公園の相反する2つを一つにくくってしまった事だ。
第二は荒川第一調節池が平成16(2004)年に竣工し囲繞堤と堤防に包囲され荒川の出水による冠水が殆ど起 きなくなり、乾燥化が加速された。
こうした要因による自生地の乾燥化による植生の変化はセイタカアワダチソウやアレチウリ等外来種の侵入や、 ヨシより乾燥地を好むオギが圧倒的に増えている事に表れている。

田島ケ原サクラソウ自生地の存亡は市民の双肩にかかっています

上記の問題解決には当然の事ながら自生地、公園、河川事務所の協同が不可欠だが、これを役所に求めても 無理だ。
国指定特別天然記念物「田島ケ原サクラソウ自生地」保存管理計画策定委員会が4年間に渡って開かれたが、 委員の先生方から役所間の協同が必要な事が再三語られながら、4年の間連絡調整会議がもたれた事は一度もない。
やる気の問題も大きいが、とにかく縦割りの壁は厚い。
田島ケ原サクラソウ自生地の危急存亡の時と気づいて、我々市民が行動しないと、さいたま市が全国に誇れる 唯一と言ってもいい自然遺産を失ってしまう。
特別天然記念物指定の植物は全国で30ヶ所だけだ。一度失われてしまったら復活するのは不可能で、もしできた としても莫大な時間と費用がかかるのは自明の理だ。
平成27(2015)年4月2日改訂