二十四節気の啓蟄に見る自生地

自生地を春一番で彩るヒロハアマナは晴天のみ開花

2010年3月6日(土)

3月6日の啓蟄は予報は朝から雨だったが、細かな雨がやんで明るくなったので自生地へ向かった。堤防上か ら見る自生地は土色の世界にもかなり緑が多くなった気がし、観察路から見る景色もかなりカラフルになり自然の鼓動を聞くよう な気持だった。
北方向からの自生地
北方向からのサクラソウ自生地。緑色の濃い所はノカンゾウやノウルシの若葉

前日は殆ど風が無く気温が20℃の4月中旬の暖かさになり、 ヒロハアマナが全開でアマナの初咲きも見られたようだ。でもこの日は昼近くに一時太陽がうっすらと顔を出しただけで、一 部が下向きに開き加減の花をつけているのと白い花らしきが点々とあるのみで、アマナは全て蕾だった。
3月6日のヒロハアマナの大株 3月12日のヒロハアマナの大株P
薄日が射しても花は開きません 3月6日 晴天で上向きに花開いています 3月12日
ヒロハアマナの株
この後はあまりハッキリしない天気が続き、待望の青空が広がり穏やかに晴れたのは12日になってしまった が、この日は素晴らしいヒロハアマナの群生が見られた。
ヒロハアマナ(広葉甘菜)またはヒロハノアマナ ユリ科アマナ属の多年草。アマナよ り一足先に全開して春一番で自生地を彩る。名の通り葉が広く中心の白い葉脈がハッキリ分かり、苞葉が3個なのがアマナとの主 な相違点。
環境省レッドデータリストで絶滅危惧II類(VU)
自生地のヒロハアマナは耕作地だった時 に持ち込まれたものが根付いたと云う。
右の写真は唯一観察路近くの株だが、何者かによって花が半分に切られ子房まで露 出している 3月12日撮影
ヒロハアマナの群生
ようやく好天に恵まれて花開いたEブロックのヒロハアマナの群生 3月12日

この日は2〜3の株でサクラソウが花芽をつけていた。
14日には待望のサクラソウの初咲きが見られた。でも咲いたのはA地区の最初に蕾をつけ た株ではなく、去年同様記念碑近くの株だった。早く蕾をつけたのが必ずしも早く開く訳ではないのは不思議だ。
サクラソウ花芽 サクラソウ初咲き
花芽をつけたサクラソウ 3月6日 今年初咲きのサクラソウ 3月14日
サクラソウは各地での保護活動が功を奏して2007年8月の環境省レッドリスト見直しで、絶滅の危険性が下 がったことにより、絶滅危惧II類(VU)から準絶滅危惧(NT)に変更されている。

ツマグロオオヨコバイ
自生地の観察を終り、外側のジロボウエンゴサクなどが生育する斜面で芽生えを探していると小さな虫が飛 んできた。将に啓蟄で地中の虫だけでなく空中を飛ぶ虫も動き出したのを実感した。調べてみると普通に見られる別名バナナ虫と も言われるツマグロオオヨコバイだった。
ツマグロオオヨコバイ(褄黒大横這):カメムシ目ヨコバイ科 歩くときに横にずれな がら移動するため「横這い」の名が付いた。林縁や草原に多く見られ、いろいろな植物の汁を吸う。一部の地域で「バナナ虫」と いう俗称で知られる。体調は13mm前後だが、この仲間では10oを超えるものは大形という。

啓蟄(けいちつ):3月5日頃、春の暖かさに冬ごもりしていた虫が外に這い出てくる頃のこと。「啓」には「ひ らく、開放する」などの意味、「蟄」には「冬ごもりのために虫が土の下に隠れる、とじこもる」という意味があるという。
雷は夏だけではなく春にも多く春雷の季語があるが、啓蟄の頃に鳴る雷は特に「虫出しの雷(らい)」という。