二十四節気の立春に見る田島ヶ原サクラソウ自生地

上空にはノスリが舞い、ノウルシが芽を出し始めた自生地

2011年2月4日(金)

昭和水門
立春の今日は昨日に引き続いて気温が高く、さいたま市でも13.8℃まで上がり3月下旬並みの気温でま さに春のようだった。
サクラソウ自生地は草焼き以後広々として見通しが良くなり株数などを数えるサンプル区画を示す4本 の杭も各区に見られる。
ハンノキの雄花序、雌花序がかなり赤みを帯びて葉芽も膨らんできた。鴨川沿いではヒガンバナの株 がますます大きくなって青々した葉が茂っている。
E 区の一番奥の公園側からも遠くに昭和水門が見えます。草焼きをした今の季節でなければ見られな い風景です
戦後の一時期壁土にするために荒木田土を掘ったという窪地の全容もあらわだ。
相変わらずドバトの群れが餌をついばんでいるが、ツツーと走っては止まるツグミや尾を上下にせわ しなく振るハクセキレイもアチコチで見られる。
ハクセキレイ ノウルシ ツグミ
よく見るセキレイのハクセキレイ 赤い3兄弟に緑のノウルシの若芽 胸を張る代表的な冬鳥のツグミ

フト空を見ると猛禽類らしきがE区の奥の桜の木の方面に飛んで行き、とまったようだ。鳥は追いかけ たら逃げられるは分かっているが、こればかりは見逃すわけにいかずソロソロと近づいて行った。
確かあの辺りと思ったよりかなり近くの木にとまっており、カメラを構える前に飛び上がられてしまっ た。
上空を3回4回と旋回しながら遠ざかって行ったのでとにかく空に向けてシャッターを押した。
ノスリ ノスリ
下面の翼角に黒斑があり尾が円い 翼が幅の広いのが分かる
写真を見るとバフ色の翼下面の翼角に暗褐色の斑があり翼が比較的幅広で、尾が短く円形だ。ノスリ に間違いなかった。
ノスリは主に本州中部以北の山林で繁殖するカラス大のタカ科の留鳥で、秋冬には低地や暖地にも移動 するといい、地上にいるネズミやカエル、ヘビなど様々な動物を捕食するという。
バフ色 : 牛やシカの揉み皮の淡い黄褐色のこと。日本の伝統色名では黄土色に近い。
翼角(よっかく) : 鳥が翼をたたんだ時、翼の最先端になる部分をいう。人間の手首に当たる。

絶滅危惧種の現況
帰りかけたところに小林さんが手を振っているのが見えた。聞けば上梓したばかりの「荒川中流域左岸 における絶滅危惧動植物の現況について」を関係先に配布している途中と言う。
これは小林さんが平成11年から平成22年の11年間、荒川総合運動公園〜荒川彩湖公園までを塚本田ん ぼ地区、道場田んぼ地区、秋ヶ瀬公園地区、さくらそう公園地区、荒川彩湖公園地区の5地区に分けて希少動植物の推移を調 査した集大成で、全精力を傾けた50有余ページの労作だ。
特に塚本、道場の両田んぼ地区については単なる要望や提言だけに止まらず、調査中に地権者の農家 の人達と触れ合ってきた経験をもとに地権者とその支援者による自然保護区「自然と共生する村」創設に強い意欲を述べて いる。
この構想を多くの人と発展させ、実現させて次世代に引き継いでいく事を祈りたい。
塚本田んぼ地区や道場田んぼ地区は稲作を行う生産エリアとして、生産者を支援しながら自然との共 生社会を再生させ、次世代に継承したいものである。この地域に奇跡的に残された自然を、我々の世代で消費し尽くすこと は断固避けなければならない。「荒川中流域左岸における絶滅危惧動植物の現況について」P24より抜粋

立春(りっしゅん):2月4日頃、春と言うにはまだ早すぎるが、今年のように3月下旬の気温になると将 に文字通りの春の到来だ。サクラソウ自生地ボランティア仲間の小林さんが労作を上梓されたのは立春の吉報だった。