二十四節気の芒種に見る田島ヶ原サクラソウ自生地
ノダイオウの確実な生育記録はサクラソウ自生地だけ
2012年6月5日(火)
|
|
ヌマトラノオに似て花穂が上向き |
オカトラノオに似て先が上がる |
サクラソウ自生地は特別天然記念物の石碑がようやく頭が見えるだけになり、観察路の両側は完全にヨシとオギ
で左右の見通しはほとんど効かなくなった。
サクラソウ科のオカトラノオ属が早くから花を付ける中央観察路沿いのA区では上を向いて白い蕾を付けている花
穂が5〜6本見られた。花付きが比較的疎らで花穂が直立するのはヌマトラノオの特徴だが花期は7〜8月と遅い。オカトラノオのように
先だけを上向けた花穂も見られた。
オカトラノオ属は雑種を作り易く
オカトラノオと
ヌマトラノオ
の雑種の
イヌヌマトラノオ
がよく知られているが、花穂の形から見るとまさにそれだ。「彩湖の野草」でもイヌヌマトラノオの表記をしている。現在のさい
たま市の荒川河川敷にはオカトラノオは見られないがかなり前にはあったのだろう。これからが本格的な季節なのでよく観察していこう。
ノダイオウが1本だけ伸び出していた。
ノダイオウ(野大
黄)は外来種の多いギシギシ属の中では貴重な在来種で、環境省レッドリストでは準絶滅危惧(NT)だ。そして先日公刊された埼玉県
RDB2011では絶滅危惧TA類(CR)に格上げされている。「河川改修や湿地開発など人為的側面と帰化種エゾノギシギシとの競合」により
減少し、「現在ノダイオウの確実な生育記録はさいたま市田島ヶ原さくらそう公園の保護区だけ」という。
ノダイオウの特徴は内花被片にこぶが無い(上の写真)。他のギシギシ類はすべてこぶがあるので区別できる。ノ
ダイオウはエゾノギシギシなぞと雑種を作り易く保護のための研究が続けられているようだが、すぐ近くにアレチギシギシが群生して
いたのは心配だ(葯をいっぱいに吊り下げた右の写真)。
果胞が一部茶色になったトダスゲが見られた。
カヤツリグサ科のトダスゲは名前の由来の戸田ヶ原では一時絶滅したと思われていたが、再発見され保護が進ん
でいるようだ。環境省レッドリストでは絶滅危惧TB類(EN)、埼玉カテゴリーでは絶滅危惧TA類(CR)だ。
埼玉RDB2011年版では「個体数は少なく、100未満。自生地が開発計画にかかり一部移植もしている。自生の株は
ますます減少している。」と記されており、サクラソウ自生地での保護は貴重だ。
|
|
真中が雄花穂で両側が雌花穂 12年4月25日 |
雌花穂の先にしばしば雄花がつく 12年4月28日 |
|
|
果胞が膨らみ粟菅の別名躍如 12年5月21日 |
乾燥すると褐色を帯びるのも特徴 12年6月5日 |
果胞(果嚢):スゲ属に見られ雌ずいを包む袋状の器官。果実になっても残り、果皮と種皮は離れ
る。痩果の一種。
|
|
白い雌しべが見える花穂の上方 |
雄しべが伸び出し花冠も見える |
南観察路にはオオバコが一直線に群生していた。種子が人間の靴底で運ばれるというが、観察路の真中で葉を茂
らせ花穂を立てている
雌性先熟で先に白い線状の柱頭を出し、花粉を受けてその後雄しべが咲き昇っていく。雄しべ4個が伸び出す頃に
は花冠も萼の上部に出て開いていく。
観察路沿いに多く見られるのはたくさんの葉を付け虫こぶも付けたセンニンソウやキンミズヒキの緑の葉のかた
まり。ヒルガオやヤマノイモ、アカネ、ヤブガラシそしてシオデなどのつる植物が伸び出している。
クサフジの赤紫の花穂も見られ、ノカラマツは自生地全体で白い蕾を付けているがまだ花は咲かせていない。ク
ララも花穂をもちあげて蕾をたくさん付けているが蝶形花までにはなっていない。
|
|
|
托葉の変化した巻きひげのシオデ |
これから自生地の主役ノカラマツ |
立派な在来種のクララ |
芒種(ぼうしゅ):昔は田植えの時期だったが現代では一ヶ月ほど早い。第二十五候 蟷螂(かまきり)生ず。第二十
六候 腐れたる草、蛍と為るは雨で蒸された草の中から蛍が飛び出る。第二十七候 梅の子(み)黄ばむは梅の実が熟す頃、梅雨入り。